2015年1月6日星期二
「もう悩まない」。プロ5年目、斎藤佑樹の決意
「もう悩まない」。プロ5年目、斎藤佑樹の決意
プロ4年目のシーズンを、今の斎藤投手はどう位置づけていますか。
「3年目にケガをして、不安なく投げられるようになったのが4年目。僕の中では1年目や2年目よりも、頭で考えていることを体で表現できたと思っているんです。それを体現するための技術はできてきている。この方向性で多分、間違ってはいないと思います」
―― 頭で考えていることというのは?
「こういうふうに投げればこういうボールが行くはずだ、という自分のフォームにようやく辿り着きました。僕、今のフォームが一番、自分に合っているフォームだと思うんです。それって今、感じたことではなくて、じつは高校生の頃から思っていたことなのかもしれないなって思います。『あっ、この感じがいい』じゃなくて、『この感じが懐かしい』って感覚ですから……ここまで、あちこち回り道をしてしまって、その分、いろんなクセがまだ体には残っているんですけど、でも、このフォームで投げればいいボールが行くということが自分でハッキリとわかったので、あとはこれを何回も何回も繰り返すだけ。最終的には、キャッチボールの時もこのフォームしか投げられないっていうぐらいまで洗練すれば、試合でもいい感じで投げられると思うんです」斎藤佑樹
―― それは、高校時代のフォームに戻ったということですか?
「結局は戻っているのかもしれませんけど、でも、感覚で投げていた高校時代と、理論を頭の中で理解して投げている今とでは、形は同じでも中身は違うと思います」
―― 回り道をしてしまったのは、なぜだったのでしょうか。
「一番わかりやすいのは、速い球を投げたいというところにこだわってしまったこと……いずれにしても、その時々で満足してなかったからいろんなことをやってみようと思ったんでしょうね」
理想的なフォームの最大の特徴を言葉にしていただくとしたら?
「僕の場合、右ヒザを折って低い位置から投げに行くことで、最終的なリリースポイントの幅が広く取れるようになるんです。右ヒザを曲げずにパチーンと離すと、ボールを強く叩けるんですけど、合うところが一点だけになってしまう。それよりも低いところから入って、リリースポイントの幅を保ちながら、線のどこで離しても指に掛かるイメージで投げた方が、低めの両サイドに真っすぐのボールが伸びる感じが出るんです。そこから変化球を落とすと、さらに効果的になると思います」
―― 今年の初登板は開幕2戦目でした。そこでそれなりのピッチングをしながら、2度目の登板でコントロールを乱して、ファームへ……今、振り返ると、何がああいう結果をもたらしてしまったと思いますか。斎藤佑樹
「いろんな気持ちがあまりにもたくさんあり過ぎて……もちろん、抑えたいという気持ちが空回りしたことはあったと思いますけど、それよりも技術的な問題が大きかったと思います。あの頃のフォームは、ボールをパチーンとリリースすることはできていたんですけど、ボールを離した後がわからないという感じでした。結局、ボールを操れてなかったんですよね。いい球は行くかもしれないけど、ボールが操れてないから、常にいい球が出ない。フォームが固まってなかったんです」
―― そのフォームが固まってきて、シーズン終盤にはボールを操れている印象を受ける試合がいくつもありました。それでも一軍で2勝、クライマックスシリーズではメンバーから外れた……そこはどう受け止めていますか。
「それも、やっぱり完璧には体現できていなかったからだと思います。頭の中でわかっていても、いろいろ回り道したクセは体に残って、簡単には抜けない。それに加えて、自分の体が元気なときにはそのフォームで投げられても、元気じゃなくなったらフォームがズレてしまうんです。6月(7日)に室蘭で投げたイースタンのベイスターズ戦あたりから、一軍に戻った7月(12日)、札幌でのホークス戦あたりまではすごくよかったんですけど、その後、また迷いが生じたりして……」
―― まだ何か、他に新しいものがあると?斎藤佑樹
「7月のホークスとの試合は5回を1点に抑えたんですけど、勝ち負けはつきませんでした。目指していたピッチングがある程度できていたのに、それでも勝ちがつかなかった。そこでなぜだろう、もしかしてこれじゃダメなんじゃないかと考えてしまったんです。勝てなかったのは5回までしか投げられなかったからだ、6回、7回まで投げなくちゃ、先発としての仕事を果たしたことにはならない、そのためにはまだ変えなくちゃいけないところがあるはずだと……」
せっかくいいフォームにたどり着いたのに、そこでまた遠回りをしてしまった?
「僕、悪かった時のイメージって本当に頭の中にないんです。それがいいことなのか悪いことなのか、よくわかりませんけど(苦笑)。とにかく悪い時のイメージが頭に残らないから、悪くてもすぐに修正できる強みはある。ただ、その分、いい時のイメージが残り過ぎていて、周りの人がよかったと言ってくれても、それを素直によかったと思えない。もっといいものがあるんじゃないかと思って、突っ走れなくなるんです」
―― それでも最後、9月29日のライオンズ戦で2勝目(5回1失点)を挙げました。1勝で終わらなかったことは大きかったんじゃないかと思うのですが……。
「そうですね。あのライオンズ戦は、先発のチャンスをいただけるとわかったのが登板の3日前だったんです。しかも(大谷)翔平が風邪をひいて、さらに一日繰り上がった。あわてて準備したんですけど、時間もない。こうなったら、これがシーズン最後の登板だろうし、よくても悪くてもどっちでもいいじゃないかという思考でスタートするしかないと思ってマウンドに上がったら、初球、すごくいい感じで入れたんです」
―― バッターは栗山巧選手、136キロ、低めのストレートでした。
「あの一球は、僕もエッと思って……あれっ、この感じ、いいなと思いました。いい感じで力が抜けて、ストライクもアバウトに取れた。これこれ、こういう感じが欲しかったんだって思いました」斎藤佑樹
―― でも、そういう心境で2015年の初登板を迎えるのは難しいでしょうね。
「だから、キャンプから入れ込み過ぎないようにしなきゃと思ってます。きっと(栗山英樹)監督もピッチングコーチも、キャンプから競争、競争って煽るじゃないですか。そこに乗っかって焦ったら、僕の場合はダメだと思ってます。シーズンの最初はゆっくり、力を抜いてスタートするぐらいの気持ちの方がいいかなと思ってます」
いやいや、周囲からの期待がそれを許してくれないんじゃないですか(笑)。あえて言いますけど、“持ってる男”として、初登板は勝利を期待される、10勝10敗じゃ満足してくれない……そういう普通じゃダメだと周りに上げられるハードルの高さが、平常心の邪魔をすることがあるんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょう。
「そこがやりづらいところです。でも、そうやってハードルを上げてもらえる選手でなくちゃいけないという気持ちもあります。だから開幕前まではそっとしてもらって、開幕して、勝ってから上げてもらうということでどうですかね(笑)。最初に勝ってしまえば、あとはいくら上げてもらっても大丈夫だと思うんですけど」
―― では、5年目はどんな自分をイメージしていますか。
「たぶん、余計なことで悩まないと思います。フォームは今のこれで行くと決めていますし、そこはもう悩まない。あとは、今のフォームの精度を上げるための反復練習をするしかありません。キャッチボールでもミスが出ないように、指に掛かからない一球をなくすよう心掛けて、思い描くフォームを正確に再現していくこと。それができれば、結果はついてくると思っています」
―― 夏以降は、楽しそうに野球をやれている印象がありました。
「そうですね……笑顔でいることを意識しているからかな。世の中、悲壮感を表に出しちゃっている人って、たくさんいるじゃないですか。僕もそうだったと思うんです。でも最近、よく言われるんです。ちょっと笑うだけで『楽しそうだね』とか『さわやかだね』って。ああ、笑顔でいるって大事なことなんだなと思いました」
―― 一軍では2勝でも、得たものも多い4年目だったのかもしれませんね。
「7月以降、一軍で投げた試合はそれなりの手応えもありましたし、結果的に今年は一軍と二軍を行ったり来たりしましたけど、その中でも1年間、ケガなくローテーションで回り続けることができたことは大きかったなと思ってます。そのパターンを体が覚えて、こういう感じでいけば1年間、ローテーションで投げられるんだということがわかりましたし、あとは試合ごとにいつでも簡単にストライクが取れるね、というピッチングができればいいですね。真っすぐでも変化球でも、 簡単にストライクを取れれば、それが安心感につながりますからね。僕、以前はよくそう言われたんですよ。つまり、できていたことをやろうとしているだけなんだから、できないはずはないんですよね」斎藤佑樹
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